呼吸と姿勢

肩こりや腰痛などの筋骨格系の問題、内臓や婦人科の問題、自律神経の問題など身体に出る不具合には様々な問題がありますがそのほとんどは、姿勢の崩れと呼吸の乱れが原因となっています。

不適切な姿勢

姿勢の崩れときくと猫背や身体のねじれなど背骨や骨盤の歪みからくるものとイメージできると思います。そしてその歪みが身体に不具合を出すというのも何となく理解できますよね。

不適切な呼吸

では呼吸はどうでしょう?呼吸の乱れ、息遣いの乱れが肩こりや腰痛の原因になっているといわれて納得できる人は少ないかもしれません。実は姿勢と呼吸は相互にリンクする関係にあり正しい姿勢がなければ正しい呼吸もできず正しい呼吸がなければ正しい姿勢もとれないのです。

これらは目に見える物質的な関係と目に見えないエネルギー的な関係という大きく分けて二つの観点から説明することができます。

目に見える姿勢と呼吸の関係

まずわかりやすいのは目に見える物質的な関係。呼吸は目では捉えにくいので、まず姿勢から説明すると猫背やがに股など目に見える姿勢の崩れ。人間が二足で立ち、動くためには重心線上に身体を持っていく必要があります。

見た目に正しい姿勢とは、簡単に言うと垂直の重心線からはみ出している部位が最小限な状態を指し猫背やがに股など、重心線からはみ出している部位が多ければ多いほどその人の姿勢は崩れていると言えます。

構造的に考えると重心線から離れた部位には重力という負荷が余計にかかります。姿勢を維持するためには余計な筋力を発揮し負荷に抵抗しなければなりません。人間の身体は余計な力を使っている部位があれば力を使わない部位をつくり全体のバランスを取ろうとします。そこでつくられた使われなくなった部位が実は姿勢を維持する上では重要な力であることも多いのです。

それが見た目上の姿勢が崩れた状態です。

つまり必要な力が必要以下にしか使われず不要な力が必要以上に使われている状態

当然身体はバランスを崩し肩こり腰痛など筋骨格系の問題を起こすのは当然のことながら内臓も本来あるべきポジションからずれるため身体のあらゆる機能も低下しやすくなります。

そして見た目上の姿勢で最も崩れやすい部位があります。

それが「胸郭」です

胸郭とは背骨と肋骨、そして胸にある胸骨とでつくられたカゴです。姿勢の崩れにより胸郭はつぶれ動きが制限されます。胸郭の動きが制限を受ければ横隔膜もうまく働かず呼吸も浅くなってきます。

逆に言うと呼吸が浅くなることで胸郭が歪み姿勢が崩れることもあります。

姿勢が崩れるから呼吸が乱れるのか?呼吸が乱れるから姿勢が崩れるのか?

これは卵が先か鶏が先かの理屈同様どちらかが先ではなくどちらも相互にリンクして崩れるのです。

ではなぜ姿勢と呼吸は崩れるのか?ここに目に見えないエネルギーが関わってきます。

目に見えない姿勢と呼吸の関係

人間も含め、動物が動く根本的な理由は何でしょう?「快」か「不快」かです。「快」があればそれを求めて動き「不快」があればそれを避けて動きます。動くための基本欲求といえます。

他の動物に比べて人間がややこしいのはこの快・不快に「感情」というシステムを上乗せしたところです。

喜怒哀楽。実はこの感情という目に見えないエネルギーが姿勢と呼吸を乱す原因になっています。

東洋医学では感情が病気の内的要因である内因と捉えており内因が肚にある五臓六腑を侵すと考えられています。肚。つまりお腹。実は感情の乱れが物質的にもお腹を硬くします。

例えば怒りや恐怖などのネガティブな感情があるとき動物の持つ防御反応で筋肉は硬くなります。この時もっとも硬くなるのがお腹。本能的に腹を守ろうと硬くするのです。

そしてこのときの姿勢は見事なまでに猫背になります。更に呼吸も浅くなっています。

喜びの感情についても同様で例えば大笑いしたとき腹を抱えますよね?このときも腹が硬くなり姿勢は崩れ呼吸は浅くなっています。

つまり感情は肚に表れ筋肉を硬くし姿勢と呼吸を崩すのです

逆に言うと感情の起伏を少なくし平常心でいられれば姿勢も呼吸も乱さずにいられるということです。ただしそれは言うほど簡単なことではありませんよね。というより不可能と言っても良いでしょう。

ではどうすればよいのか?感情も生まれたその時に発散できれば良いのです。つまり怒りたいと思った時に怒り泣きたいと思った時に泣き笑いたいと思った時に笑う。これができれば感情は肚に溜まることなく発散できるのですが現代社会ではこれが制限されてしまうことが多いですよね。感情の赴くままに行動していたらとてもじゃありませんが社会に適応できませんから。

そこで発散できなかった感情が肚に溜まるのです。現代風に言うとこれを「ストレス」と呼びます。

そして肚に溜まったストレスを吐き出す方法はただひとつ。呼吸です

呼吸は「息」と言い変えることもできます。日本語は面白いもので「息」とは「自ら」の「心」と書きますよね。息遣いが自分の心遣いをつまり感情をコントロールするのです。どんなに外的なストレスが身体に降りかかっても息遣いさえ乱れなければ害になることはありません。

そして息が通り、身体に滞りがなくなれば自然と姿勢は良くなります。

もうひとつ言っておくと姿勢とは見た目の姿勢だけを表すのではなく「何かに取り組む姿勢」や「打ち込む姿勢」など内面の在り方を指して使われることもありますよね。面白いもので心の在り方である姿勢も見た目の姿勢に表れます。何かに取り組む姿勢や打ち込む姿勢が悪い人は見た目の姿勢も悪くなっているのです。

つまり正しい姿勢正しい呼吸というのは決して目に見えるものだけではなく目に見えない部分の表れでもあるのです。

そういったわけで当院では姿勢と呼吸を身体の不具合の主な原因と捉え対処しています。